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***山田としお メールマガジン No.136***
2009年1月19日発行
山田としお公式ホームページ
(http://www.yamada-toshio.jp/)
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石破大臣、「慎重に」
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日本国際フォーラムが、「グローバル化の中での日本農業の総合
戦略」(※)を政策提言しました。
代表の伊藤健一理事長が1月15日付の読売新聞の論点でそれを紹
介されているし、日本農業新聞も同日付で記事にしているのでご覧
になった方も多いと思います。
フォーラムの委員は、新日鉄の会長で経団連の会長もおやりにな
った今井敬さんはじめ、経済界やマスコミ、お役人、外交官、政治
家と多彩ですが、政策提言の原案執筆は例にもれず、市場競争を主
張してはばからない学者先生がおやりになっています。今回も、本
間正義・大泉一貫の両大先生が加わっていらっしゃいます。
私も第2回会合に呼ばれて意見を表明させていただきました。その
際、今井会長をはじめ私の意見に賛同を示された委員もおられまし
た。その際の主張については、昨年8月に出版した「食料争奪時代の
日本農政」に書かせていただいています。
今回の政策提言のなかでも、「農地の利用について農業サイドと
都市計画サイドの連携による農地の利用計画を策定しゾーニングを
徹底する必要がある」「日本農業の持つ多面的な機能を小規模兼業
農家も含めて維持していることを国民合意していく必要がある」等
の部分は、私の主張が活かされたのかなと自負しています。しかし、
その一方で、『「農業は日本の工業化・産業高度化の犠牲になって
きた」「貿易立国のためにやむをえず農産物の市場開放をした」と
いう被害者意識から抜け出せておらず、こうした抵抗と農業保護へ
のこだわりが足かせになってきている」』と、わざわざカッコ書き
にして論述されているのは私の主張への皮肉なのかもしれません。
それにしても、「日本農業の基本的構想」「中長期的に推進すべ
き具体的施策」「緊急に対策をとるべき施策」に分けた21項目の提
言は、現下の食と農の状況を踏まえた時宜を得たものと評価できます。
とりわけ、食料安全保障への対応の提言は、近年の食をめぐる環
境もあるが、外交官経験者をはじめとしたメンバーの思いが表明さ
れています。しかし、論考の大部分は、相変わらず国際化、構造改
革、産業としての自立、過保護の文言が飛びかうものになっており、
市場競争、市場原理の本質は何ら変わっていません。
とりわけ納得できないのは次の2点です。
1点目は、「国民的視座での農政の展開」と見出しはいいのです
が、農地の利用の集積が進まないのは「農業者の転用期待とこれま
での農政に責任がある」と決めつけ、企業の農地の転用需要や無秩
序な街の拡大等経済・産業政策の誤りを全く反省していないこと。
2点目は、WTO交渉について、昨年7月末の交渉決裂直前の事務局
長案を受諾すべきで、「農業分野を例外扱いすることは通用しない」
と決めつけていることです。「WTOを中心とする多角的貿易体制は日
本経済の生命線である」ということを否定するものではありません
が、わが国の国土の制約等について意識的に認識を欠いたままで、
「国際化への対応こそが必要で他産業が対応しているのに農業はで
きていない」――だから、「わが国の農地460万haの3分の1の150
万haを食料基地とし、100ha規模の農業経営体を1万程度育成する、
経営形態は自由で他産業からの参入を促す」と言う感覚には、到底
ついていけません。
どういう農村地域を描いているのでしょうか。また、今、国際化
に対応してきた輸出産業が競争力強化と規制緩和で作り上げた「非
正規雇用」を真っ先に削減し、職と住を失った方々が外国人労働者
も含めてあふれているという事態をどうとらえているのでしょうか。
石破大臣は、昨年末以来、生産調整の廃止等タブーをおかない農
政の見直しを主張していますが、この提言の方向とぴったりあって
いるようで心配です。首相官邸に関係6大臣による会合を設け、その
もとに有識者会議も置くとされています。私の懸念は、この有識者
です。市場原理を主張してはばからない学者を有識者として加え、
実態とかけ離れた議論をされてはたまりません。「石破大臣、慎重
にやってください」と申し上げたい。
※ 日本国際フォーラム「グローバル化の中での日本農業の総合戦
略」は、以下URLからダウンロードすることができます。
http://www.jfir.or.jp/j/pr/pdf/31.pdf
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