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山田としお メールマガジン402号
忙中の閑題「農業者は皆、サラリーマンになってしまうのだろうか」

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    ***山田としお メールマガジン No.402***


                     2018年2月13日発行

                山田としお公式ホームページ
            (http://www.yamada-toshio.jp/)

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           忙中の閑題
「農業者は皆、サラリーマンになってしまうのだろうか」

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【農機メーカーを訪問】
 正月過ぎてから、40日、北陸新幹線で富山と東京を10往復しまし
た。雪が大変でしたが、新幹線は全く大丈夫でした。ともかく声を
かけていただいた新年会に出席しました。

 こうした中で、参議院議員を中心に、大手の農業機械メーカーを
訪ねました。

 まず、企業の概要を説明いただき、工場内の空き地(圃場)で大
型トラクターの、無人耕作作業を見せていただいた。2台の走行で、
1台は無人、もう一台は有人で、有人機が操作し、並列し、短冊形
に耕作し、最終的には周囲を無人機が耕作した。

 宇宙にある衛星を使い、電波で操作する。GPSによる自動走行だ。
確かに、何億台ともいうべきスマートフォン等も中継するのだから、
一体この宇宙にどれだけの衛星が浮かんでいるのか想像できない。
すごいことだと思う。

 続いて、組み立て工場内を見せていただいたが、2,000人の従業
員が天井から下がったデジタル表示の達成率を横目にしながら、そ
れぞれの分担で作業している。エンジンの組み立てから、完成車の
検査まで、流れ作業で進んでいる。午前中15分、昼1時間、午後15
分の休憩で、休む間もなくベルトコンベアーは流れる。その要所に
検査員がいるし、遅れそうなところには、補助員が配置されてもい
る。

 そして、工場内は、清潔だ。ゴミ一つ落ちていない。通路は、交
差する場所も、運搬の流れも床の色は交差しないようきれいにライ
ンが引かれている。多分、自動車の組み立て工場と同じなんだろう。
なお、鋳物で型を作り組み立てるエンジンは、隣接する別の工場で
行っている。働く皆さんも大変だ。男性と女性の割合は、8対2ぐら
いとみたが、女性も男性も仕事に区別は無いようだ。

【農機の生産にとどまらず、農産物の生産・販売・輸出にも進出】
 ところで、前段に、会社の事業内容をビデオと解説で紹介いただ
いた。

 驚いたのは、農機等の生産販売額は2兆円で、国内1兆円、海外向
け1兆円という。もちろん農業機械にとどまらず、近年はエンジン
や建設機械の比重も高めている。それにしても国内1兆円と言えば、
我が国の農業総産出額が9兆2千億円なので、その1割を上回ること
になる。我が国全体の生産農業所得は3兆7千億円だから、差し引き
6兆円の資材等もろもろのコストの6分の1を、この企業グループが
占めていることになる。他の農機メーカーや、肥料や農薬や運搬コ
ストや加工等のコストがあるのに、如何に当会社の比重が大きいか
がわかる。

 そして、その上で当会社は、農業生産にも進出している。兵庫県
の養父における国家戦略特区での農業経営にも「農地所有適格法
人」として参画し、鉄コーティングのコメの直播や高糖度トマトの
栽培や直売所等で、全国に15社のファームを展開している。コメの
輸出や、グルテンフリーの玄米粉の開発・販売にも取り組んでいる
という。

 私は、「これでは、農業者の経営も農協の仕事もなくなります
ね」と感想を述べさせていただいた。

【我が国は、家族農業を、地域の安定を、維持してゆけるのか】
 今、我が国の農業の最大の課題は、担い手の著しい高齢化と、一
方で、若年就農者は近年伸びているとはいえ、もっぱら農業に就業
する基幹的就農者は、今や170万人を切る実態にある。平均年齢は6
7歳だ。多分、あと5年で引退を余儀なくされる75歳以上の農業者は
50万人にのぼるのに対して、44歳以下の新規の若年就農者は年間1
万9千人、5年でも10万人でしかない。これでは、もっぱら農業に従
事する基幹的就農者は、5年で差し引き40万人が減ることになる。
とすると5年後の我が国の基幹的就農者は、120万人になり、10年後
は80万人になる計算だ。30年前の平成元年には、300万人を数えた
のであり、近年の減少は極端だ。このままでは農村という地域社会
は壊れてしまう。家族農業が消えて、地域が崩れて、農地を所有す
る会社が生産から販売を担うということになるのだろうか。どんな
日本が出来るのだ。

【世界の国々は、若い就農者が担っている】
 世界の国々の農業就業者の年齢の比較があるが、日本の比率は、
全体の就農者のうち25歳から49歳までの比率は10%でしかなく、一
方で65歳以上は62%に上る。フランスは、25歳から49歳は50%、65
歳以上は3%に過ぎない。ドイツは、25歳から49歳は49%、65歳以
上は9%である。米国は、25歳から49歳は41%、65歳以上は29%で
ある。日本の数字は異常である。フランスなどのヨーロッパは、高
齢者は一定の年齢に達すると、年金をもらって農業から離脱し街に
出て住む。農地や経営は、若い後継ぎや、新規就農者に「サフェー
ル」という仲介機関を通じて売却するという慣行が出来ているから
だという。新規就農者は、会社ではなく、若手の農業者であり、買
い取った農地の中に、または隣接して住むことを求められ、規模拡
大する農業者への売却の場合は、既存の農地から3〜5キロメートル
以内でないと買えないのだという。まさに、きちんと農業が継続さ
れて、それも自立的な農業者を育成することを条件にしているので
ある。近年の日本の農業外の会社を中心とする参入政策とは全く異
なっているのである。

【日本の政策はどこで間違ったのか】
 一体、日本の政策はどこでどう間違ってしまったのだろう。社会
の雰囲気として、農業を軽視し、所得安定の仕組みも貧弱で、高齢
者の年金受給での引退や、経営移譲の形をつくれないままで推移し
てきたということだ。もちろんこのことは、島国であり、耕地が狭
隘であること、零細な土地所有による家族による農業経営を維持し、
兼業で所得を実現し、経営移譲が進まなかったということだったの
かもしれない。

 このことをどう考えるか。家族農業が消えて、大規模企業経営が
生産・流通・販売を担い、地域を占有し、系列店舗で販売品を独占
販売する。農業者は雇用されてサラリーマンとなる。こんな日本で、
家族の形も地域も農地も守れるのだろうか。また、こうした条件下
で農協はどんな存在になっているのだろうか。

 もちろん、「会社と言っても、どんどん農業に進出することはな
いよ」「農業者が全部サラリーマンになる訳はないよ」「家族農業
は相当数残るよ」と言うのは妥当かもしれない。しかし、それで片
づけていいのかと考えざるを得ない。

 地域において、農地を守り、地域社会を支え、自然を守り、農業
生産と所得実現をはかる、そうした農業者をしっかり守る、このこ
とが我が国の存立の基本だ。このことに確信をもって政策を打ち出
そうではないか。

【農業を生業とすることで、家族も地域も国も守れるのだ】
 「農業を生業とする」そこに、家族も生活も人生もかける。
 ところが、企業等が別のねらいで、本業を宣伝するため、いかに
も社会的貢献を行っている、ということのために農業に進出するの
はやりきれない。場合によれば、仕入れ価格をけん制するため、自
らの農園からの出荷品を競争的に店舗等で販売している、という形
もあるのだと思う。

 こういう事態について、政策推進者の理念が必要なんだと思う。
企業の思惑のため、また、飾りのため、農業に参入するというのは
侮辱だと思う。自由競争といえども、そこに、地域や国家のあり方
を踏まえた理念や国家観が無ければならない。

 私は、これまで何度も同じことを言っているが、安倍総理は、総
選挙で勝利し政権を奪還した後の平成25年の党大会で、「息をのむ
ほど美しい田園風景、世界に誇るべき国柄、伝統、農村文化、私は
日本の農業と食を守ります」「強欲を原動力とする市場主義経済の
道をとってはならない、道義を重んじ、真の豊かさを知る瑞穂の国
の資本主義を目指します」とおっしゃっていた。

 総理には、この言葉を基本に置いた政策の推進を行ってほしい。
そのため、規制改革推進会議の運営やテーマや委員の選任に気を配
るべきなのです。

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