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山田としお メールマガジン368号
久しぶりの委員会質疑

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    ***山田としお メールマガジン No.368***


                     2016年3月14日発行

                山田としお公式ホームページ
            (http://www.yamada-toshio.jp/)

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         久しぶりの委員会質疑

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 2014年の臨時国会から今国会が開かれるまで、農林水産委員長を
務めていましたので、2年ほど委員会の質疑から遠ざかっていまし
たが、先週に久しぶりの委員会質疑を行いました。森山大臣の所信
に対する質疑です。もちろん、森山先生に対して質疑するのは初め
てのことです。

 当然、考えられる主要なテーマはTPP合意対策でしたが、これはT
PP承認案と関連法案を審議する特別委員会が、参議院では4月に入
ってから開催され、質問の機会が回ってくると思われるので、それ
以外のテーマについて質疑をしました。


【企業の農地所有による農業参入は養父市に限定】

 第一のテーマは、まさに議論になっている、国家戦略特区におけ
る農外の株式会社の農地所有による農業経営参入問題としました。
なお、このことは自民党の農林関係合同会議で議論の末、特例措置
の適用は同特区の指定地域のうち「担い手が不足」し「耕作放棄地
が増える恐れ」があることを条件とし、自治体は地権者から農地を
いったん買い取り(50アール以上は議会の承認が必要)、それを参
入企業に売却することとし、その後、参入した企業が適切な経営を
行っていない場合には、自治体が再び買い戻すという形で縛りを入
れることとなりました。加えて、5年間の時限的な措置とする実験
的なものとして認めることとなりました。

 私は、党と政府の検討で一定の制約を加えたとはいえ、農業を攻
撃の的にしている特区諮問会議のメンバーは、竹中平蔵氏をはじめ、
容易に妥協するとは思えず、再度この議論を持ち出してくるとの危
惧があったことから、?本当に養父市という特定の市に限ったもの
なのかどうか、養父市以外でも出てくる可能性があるのではないか、
?5年間に限るとする制約を加えているものの、この期限を延長す
るなり撤廃するなどの動きを作り出してくるのではないかと質しま
した。

 答弁は、特に、内閣府の回答はあいまいで、農水省との間で思惑
が違うのではないかという印象を持ちましたが、政令で具体的に
「養父市のみ」と明記されるかどうか、きちんと見守っていきたい
と思います。

 さらに私は、総理の言葉とされている「規制の岩盤を打ち破る」
「それは私が国際公約したことだ」「私の判断でそれを行う」とい
う内容は、内閣府が原稿を書いて総理に言わせたのではないかと疑
っていたので、そのことも触れましたが明解な答弁はありませんで
した。


【圧倒的に必要なのは若い担い手の確保】

 要は、この議論はまだまだ続くのだと思います。というのは、そ
の背景に農業の担い手の高齢化という課題があるためです。特に、
農水省が各国の農業従事者の年齢構成を比較して示した資料による
と、日本は他国に比べて圧倒的に高齢化しており、なんと、65歳以
上の割合は、フランスは3%、ドイツは9%なのに、日本は61%にも
上っています。この表を見た議員からは、「こんなに高齢化してい
るのか」「これでは、日本の農業に展望はない」との発言が続きま
した。これを見せられたら国家戦略特区の経済界の面々も、多分総
理も、日本の農業はこんなに弱いのかと受けとめ、それならばと企
業の参入を大々的に打ち出してきたのではないかと思います。

 そこで私は、第二のテーマである担い手の育成と確保に関連した
質問を行いました。
 すなわち、この資料のまとめ方は意図的なものではないかと質し、
日本には、かつては隠居制度があったが今は無く、ヨーロッパにあ
る高齢者に対する離農年金の制度も今は無くなっていることや、
ヨーロッパには「農地は国王から預かったもの」として、一定年齢
になると離農して町に住み替え、子供や近隣の農家や新規就農者に
農地を譲り売却する慣習があることを指摘しました。日本にはそう
したことがないのであって、背景の違いの説明もなく単なる各国の
比較を出しただけでは、ややもすると企業参入を推奨する資料とな
ってしまいかねない、という指摘です。

 また、日本でも近年は、若い担い手を中心に相当規模を拡大して
おり、平均耕地面積は2.5ヘクタールですが、その一方で、20ヘク
タール以上層の経営体による耕地面積は農地全体の37%を占めてい
ることを指摘しました。それにしても、40歳未満の基幹的農業従事
者は7万人程度であり、農業の常雇いの雇用者を加えても31万人程
度に過ぎず、これでは将来の日本農業は大変な事態となってしまい
ます。何としても担い手を作り上げていかなければなりません。

 ところが、アベノミクスで一定の景気浮揚もあり、有効求人倍率
は24年ぶりの高水準となり、失業率も低下する中で、農業高校卒業
生の農業・林業関係への就職者は近年は5%程度しかなく、今年は
さらに減少しているといいます。文部科学省に、どういう工夫があ
るのかを質しましたが、十分なやり取りが出来ませんでした。

 また、このことについては、JAにとっても重大事であり、今回
の農協法の改正で農業重視の運営を求められているわけですが、J
Aが何らかの形でかかわっている農業生産法人は全国で500法人を
上回っており、このうちもっぱらJAが出資した農業生産法人は19
2法人あり、さらにこのうちの39法人は、若い職員が農業技術や経
営を学び新規に就農する取り組みを行っているのです。私としては、
JAがこうした取り組みを行っていることをきちんと指摘し、大臣
の評価を得ておきたかったのですが、時間がなくて残念ですが飛ば
さざるを得ませんでした。


【品目ごとの経営所得安定対策が何としても必要だ】

 第三のテーマは、品目ごとの経営所得安定対策の充実です。
 TPPでは、最も影響が大きい牛肉と豚肉の経営安定対策について、
補てん割合の充実とその法制化が打ち出されましたが、この畜産の
経営安定対策は、コストと実際の所得の比較を行いその差額の9割
を補てんするという、名実ともに経営所得安定対策になっているの
です。ところが、コメの経営安定対策である、いわゆるナラシは、
販売価格をもとにした過去5年のうち最高と最低を除く3年間の平均
的な収入と当年産収入の差額を補てんするものであり、その年々の
米価の変動に左右されます。需要減で米価の継続的な低下が見込ま
れる中では、これでは不十分だと指摘しました。

 また、30年産から、国が主導する形での生産調整を止める方針が
決まっていることから、その場合、7,500円の直接支払をどう扱う
のか、飼料用米への助成金をどう扱うのか、これら助成金と生産調
整の目標達成、未達成との関連をどう扱うのか、早急に詰められな
ければならないと指摘しました。

 大臣は、飼料用米の生産拡大は閣議決定しており、平成37年に11
0万トンという生産努力目標を下げることはしないし、また、水田
フル活用を基本とする制度運用も行うので心配はないとの答弁でし
た。

 このほか、規制改革会議による指定生乳生産者団体を中心とする
酪農の計画生産の取り組みへの攻撃や、TPP対策大綱でも検討課題
としている収入保険の仕組みの検討状況、輸出拡大戦略として欠か
せないチェックオフ制度の導入の必要性等について意見を述べ、大
臣の決意を伺いました。


【最後に「日本の将来像の共有」を訴えた】

 なお、最後に時間切れが迫りましたが、次に質疑に立つ中泉先生
(秋田県選挙区)が、「私の時間に食い込んでもいいですから、思
いのたけを言っておいてください」とのありがたい言葉を頂いて、
時間を超過して、最近の私の持論である経済界・政府・党・国民に
よる「日本の将来像の共有」の必要性を訴えました。大臣からは、
「その重要性を認識しており、経団連やJAと積極的に意見交換し
ているし、さらに強めてゆきたい」との決意を聞くことが出来まし
た。
 森山大臣、そして中泉先生、ありがとうございました。



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