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***山田としお メールマガジン No.394***
2017年7月18日発行
山田としお公式ホームページ
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日EUの大枠合意とコメの先物取引を考える
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【九州北部における大規模豪雨被害をお見舞いします】
福岡・大分を中心とする大規模な豪雨被害が生じました。福岡県
農政連の支部総会の一番最初が朝倉支部で、是非出かけたいと考え
ていましたが、とんでもない大きな被害が生じ、かないませんでし
た。心からお見舞い申し上げます。隣の熊本の阿蘇地域も、戦後か
ら20年周期で外輪山が崩れる豪雨被害が生じており、これらも含め
て九州北部地域の豪雨は、地球温暖化の最前線にあるのだと受け止
めざるを得ません。我が国は、米国に追随しないで地球温暖化対策
(パリ協定)にしっかり取り組まなければなりません。
災害対策特別委員会筆頭理事としても、全力を挙げて対策に取り
組みます。
【万全の国内対策が講じられるべき】
ところで、日EU経済連携協定交渉は、大枠合意が成立しました。
TPPが進まないことや、米国や英国等の保護主義的な動きに抗し
て、自由貿易推進の動きを作り続けるとする日本やEUの焦りも含
めた姿勢があったからでしょう。
焦点は、日本にとっては自動車の関税削減の撤廃までの年限、そ
して、EUは農業生産の中心をなす乳製品の輸入数量枠の拡大でし
た。自動車の扱いは分かり易いのですが、乳製品の扱いは、本当に
わかりづらいものがありました。
私は、一貫して、我が国の生乳の生産動向、需給の見通し、近年
の著しい酪農農家戸数の減少、そして全く内容が明らかにされてい
ない畜安法の改正による生乳の集荷販売の管理、飲用と加工仕向の
計画化、それを支える補給金交付の仕組み等を踏まえたうえで、あ
くまで需給上不足する分のみについて対処すべきと発言してきてい
ました。
結果は、EU特産のソフト系チーズ等の一定量の関税割当数量の
拡大と、枠内税率の16年後の撤廃、日本国内でどうしても不足する
ため一定量を国家貿易で輸入していたバターや脱脂粉乳について、
国家貿易を維持したうえで、民間貿易によるEU枠が新たに設けら
れました。
また、豚肉は、国産の豚肉と調合してハムやソーセージに加工す
る低価格の豚肉を相当量輸入していますが、高価な部位の輸入と抱
き合わせる差額関税制度を維持しつつ、安価な豚肉の輸入について
大幅に関税を下げて、10年後の撤廃を決めました。なお、輸入急増
に対するセーフガードは維持しています。このことはわが国の豚肉
との競合が心配です。なお、スペイン等で特産の豚肉製品がありま
すが、それらについてはEUの強い要求にこたえたものであるらし
い。
この他、ワインは即時関税撤廃となりますが、これもEUの要求
にこたえたものです。もっとも、日本酒や国産ワインや焼酎等も関
税なし、輸入規制なしでの輸出が可能となりました。
なお、焦点となっていた自動車の関税10%は8年目に撤廃、部品は
一部を除いて直ちに関税撤廃となりました。
【国内対策は、乳製品の補給金アップとマルキンの前倒し実施が必
要です】
ところで、総理は、直ちに国内対策を指示し、早速対策本部が開
設され、対策案の検討を始め、党も直ちに具体策の検討に入りまし
た。
対策の柱は、
一つは、指定団体制度の改変も含む畜安法の内容がきちんと国内
の需給の変動に応えて、生産・出荷・加工・販売がスムーズに進む
のか、という心配についての対処です。ご案内の通り、全量集乳し、
飲用・加工へと調整するこれまでの制度が、自由な生産販売をもく
ろむ数は多くないが声だけは大きい生産者グループにより混乱させ
られるのでないかとする不安が充満している中で、まず、「加工原
料乳の需給はきちんと管理するのだ」とする政省令が早く示されな
ければなりません。そのうえで、加工に仕向けられる生乳について、
再生産可能な所得を補償する補給金の水準が示されなければなりま
せん。
二つは、消費者の多様な需要にこたえられる乳製品の開発・加工
対策の強化です。
三つは、加重な労働に苦しんでいる酪農家の働き方改革です。I
Tを活用した経営体も登場しており、搾乳ロボット等の省力化機械
や、分娩監視装置等の新技術の導入対策も必要です。
四つは、豚肉等対策ですが、TPP協定合意の際に法律化され、
合意後に発動することとなっていた豚マルキン(養豚経営安定対策
事業)のTPP協定発効前の前倒し実施です。
五つは、我が国で地理的表示に登録されている農産物や酒類など、
日EU双方の地理的表示産品の保護の対象を確認し、日EU間で相
互保護を目指していくことを確認しました。これからは、これら国
産農産物をEUはじめ各国に輸出する対策が必要です。ちなみに、
TPP対策として盛り込まれたチェック・オフ制度について、75
%の国内生産者の合意と拠出が条件とされていますが、国内では、
豚肉について養豚協会を中心として検討が進んでおり、現段階で5
5%の生産者の合意が出来ているといいます。この比率をさらに高
めるとともに、制度として作り上げ、輸出促進に向けた効果的な取
り組みを促進しなければなりません。
【コメの価格形成をどう考えるか】
ところで、今、コメの堂島先物取引所の本上場認可が申請されて、
それを認めるか、どうかが焦点になっています。これまで3度にわ
たり試験上場の形で認可を行ってきていたものです。
私は、これまでも、一貫してコメの先物取引に反対してきました。
その理由は、国が生産調整の目標を定め、その実施を求め、ナラシ
や直接支払いも目標の達成を要件とし、各県、各JA、農業者が計
画生産に取り組んでいるときに、自由な生産・流通・販売を促進さ
せることで成り立つ先物取引を国が認定するのは筋が通らないとい
うものでした。
ところが、30年産から国が目標を配分しない、ナラシも目標達
成を条件としない、そして31年産から実施に移す収入保険制度は、
個々人が、自らの青色申告をもとに、収入減少を補てんするもので
あり、加入・非加入は個々の農業者の判断にゆだねられるものです。
もちろん、需給の均衡は必須であり、米価の安定は個々の所得安
定や向上にもつながります。しかし、収入保険制度のもとでは、
個々の農業者の経営判断を優先することがさらに強まるとみられま
す。要は、個々の目標配分が無くなり、所得変動への対処は個々人
の判断にゆだねられるとするとき、コメの自由な生産・流通・販売
の流れは、さらに加速するのだと思います。
【規制改革推進会議でなく、農水省でコメの価格形成の場について
論議するべきだ】
このことと関連して心配なのは、規制改革推進会議が言っている、
「JA全農の買い取りと、自分で消費者まで売れ」とする全農改革
の提言です。全農は、改革計画で、その方向で進むべく「売っても
らう」から「自ら売る」へ転換する、としています。しかし、JA
や全農が買い取れるのか、というと容易ではありません。ちなみに、
新潟の魚沼コシヒカリは、昨年の28年産の市場価格(スポット価格、
業者間取引価格)は、当初(10月)の価格(60キロ、2万800円)が、
販売終期の(今年5月)には(1万6,848円)へと低下しています。
もし、出来秋の高い水準で買い取りを行っていたとすると、最大4,
000円の差を、何らかの形で補てんしなければならないことになり
ます。その手立てはあるのか、というとそれは出来ません。よほど
補てんする積立金があるか、農業者の了解を得て平均価格で精算で
きるのか、ということになります。そんなこと絶対に出来ません。
結局、1年を通じて販売し精算するには、時期別販売の価格差はあ
るもののプール価格でしかありません。また、随時、価格が必要な
ら、現物取引市場による売買と、高い時に買ったコメは先物取引で
ヘッジしておかざるを得ないのです。
まさに、そのためにこそ、信頼できる価格形成センター(現物取
引所と先物取引所)が必要になります。今必要なのは、当面は、堂
島の先物取引の試験実施を続けつつ、新たな価格形成の在り方と、
経営安定対策の在り方等について、幅広い検討を早急に行うべきな
のです。
もちろん、その検討の場は、規制改革推進会議でありません。農
水省にきちんと専門家を集めて検討すべきです。
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