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山田としお メールマガジン360号
平和安全法制をどう受け止めるか

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    ***山田としお メールマガジン No.360***


                     2015年9月24日発行

                山田としお公式ホームページ
            (http://www.yamada-toshio.jp/)

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        平和安全法制をどう受け止めるか

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  【参議院は何としても衆議院優位を避けたかった】

 平和安全法制関連2法が成立しました。テレビで報道されている
とおり、参議院の特別委員会で、鴻池委員長の不信任動議否決直後、
委員長の着座と同時に与党議員が飛び出して、委員長席のマイクと
委員長の発言を確保し、委員長の委員会再開宣言の一方、与党議員
を排除するため野党議員が委員長席へ駆け寄り、その後は怒号で、
委員会室で傍聴していた私にもよく聞こえませんでしたが、委員長
の法案採決の発言と、それに応える与党などの委員の起立が何度か
繰り返されました。
 怒号とカメラのフラッシュ、騒然とした委員席の片隅で、長い附
帯決議を大声で読み続ける委員もいました。
 この間の委員会の議事録は、「発言する者多く、議場騒然、聴取
不能」となっていますが、法案は可決されていました。

 ここまでしなければならなかったのかと思うと同時に、これを行
わないと本会議開催にこぎつけず、そうなると衆議院で再議決とい
うことになります。それでは、参議院の存在の否定につながります。
それはダメだ、これは絶対に避けなければならないと、言い聞かせ
る私がいました。


【乱闘劇の要因は、前日にあった】

 マスコミは、委員会の乱闘の映像しか報じませんが、前日の16日
の地方公聴会の後、国会に戻り、委員会を再開して総括質疑を行い、
委員会採決に持っていきたい与党の動きを阻止すべく、衆議院から
の応援も得た野党の女性議員が腕を組んで理事会室を取り囲み、議
員が外に出ようとすると、「セクハラだ」と叫ぶ戦略がとられてい
ました。結局、朝の3時まで待ったものの委員会の開催を諦めざる
を得なかった与党としてみれば、国会議事堂を取り囲むデモの声も
あって、野党の攻勢をどうしても止めざるを得なかったのだと思い
ます。

 朝8時50分、委員長職権により、理事会の場を、突然、委員会室
に移し、委員会の開催体制を整えたうえで理事会を開催した背景は、
前日に続き再び委員会の開催が阻止されるのではないかと危惧した
鴻池委員長の判断だったのでしょう。そして案の定、野党は、理事
会を突然委員会室に替えた委員長を追及し、委員長の不信任動議の
提出に至り、それから半日以上かけて、不信任動議の趣旨説明や各
会派の討論を行い、そのうえでの冒頭の不信任動議否決、委員会再
開宣言、それに続く乱闘劇に至ったのです。与党主導の乱闘劇だけ
があったのでなくて、前日からの野党の委員会開催阻止の長い経緯
があったということです。
 

【分かりにくい平安法制の内容や進め方にこそ問題があった】

 乱闘劇を記すのが私のメルマガの本旨ではありません。
 衆議院と参議院を合わせて200時間以上に及ぶ質疑は、容易では
ありません。5月から9月までの長い時間です。私も、法案が提出さ
れる前から、党の会合や参議院の政策審議会の勉強会や雑誌等で、
内容を知るべく努めてきました。もっとも、ちょうど時期が重なっ
た農協法等改正案の審議も、衆参合わせて50時間を超えていました。
この間、参議院農業・農協研究会も20回近く開く等、直面する課題
に忙殺されていました。しかし、平和安全法制に無関心ではいられ
ませんでした。

 そして最後の局面で、平安法の審議に立ち会ったわけですが、確
信をもって平安法の内容や必要性をきちんと説明できるわけではあ
りません。ただ最後の3日間、べったりと平安法の審議に出て、各
党の真剣な集約された主張を聞き、乱闘劇にも立ち会う中で、次の
ような思いを新たにしました。

 一つは、法律の内容が、ものすごく分かりにくいものになってい
ることです。最終的には二つの法制に集約して議決されましたが、
関連する法律は11本に上るなど多岐にわたり、非常に分かりにくい
ものでした。
 法制の一つは、近隣有事等の対処の際の、日米の集団的な安全保
障による自衛権の行使です。その自衛のための武力行使が議論にな
りますが、あくまで武力行使は認めないとする憲法9条の規定の範
囲内であるとするものです。国会論議において、武力行使は「新三
要件」に基づくものとされ、「我が国の存立が脅かされる国民の生
命・自由が根底から覆される明白な危険があること」「防衛出動は
国会の承認が必要」「あくまで必要最小限の武力行使にとどまるべ
きこと」という制約が示されました。
 法制の二つは、国連平和維持活動(PKO)等の国連決議のもとで
の海外における軍事活動の支援などです。邦人救出等の取り組みも
含みますが、我が国の国際平和への貢献であり、あくまで後方支援
であるとしても、その範囲や武器使用等のあり方に関連する議論が
なされました。
 しかし、一方では、このことが「戦争法案」と言われ、「憲法違
反」とも言われました。戦争を行う法律であれば、絶対に認められ
るものではないのであって、「集団的」・「個別的」自衛権のあり
方や、武器使用や後方支援の内容等についてきちんと整理されなけ
ればなりません。

 二つは、これらの法案を1回の国会会期で仕上げるのでなくて、
時間をかけた議論があってもよかったということです。
 これは、農協法と農業委員会法と農地法の改正を一つの法律で行
った今回の進め方とも同様です。これまでの常識からすると、戦後
農政で重要な役割を果たしてきたこれら三つの法律は、当然一本ず
つ提案されていいはずのものでした。結局、農協法の審議には相当
時間をかけ、次に農業委員会法、そして農業生産法人に関する農地
法にはほとんど触れられませんでした。これと同様のことが平安法
でもあったと思います。

 三つは、尖閣諸島の問題、日本近海での無法なサンゴ漁、南シナ
海・東シナ海の海防基地の建設、過去20年間で数十倍に拡大した国
防費など、軍事力強化を進める中国の動きと、核開発やミサイル配
備などの北朝鮮の動きを考えるとき、どうしても、米国にだけ頼る
のでなくて、日米共同して防衛力・抑止力を強化しておくことが重
要であることです。民主党が政権を担っていた時代も苦労があり、
対処に窮し、迷走していたこともあることからして、思想の問題を
棚上げにしても、外交力の強化も含めて日本として準備しておく必
要性については合意ができるはずだと思います。
 政局ばかりを考えた党派的な動きにせず、じっくりと議論するこ
とが出来なかったのだろうかと思います。

 四つは、世界の国々において、宗教的・民族的な対立や貧困問題
からくる争いが多発していますが、それに邦人が巻き込まれる事態
も生じていることです。世界平和をどう実現するか、戦争放棄を憲
法で定めている我が国ですが、邦人を守るため、国連で決議した平
和回復・維持の活動において、我が国としても最低限の役割を果た
さなければなりません。これをきちんと具体化しなければならない
のです。

 五つは、法案を通したからこれでいいというのでなくて、議論を
通じた問題点、法律の分かりにくさの解消、事態によっては緊急に
出てくる問題への対処策について、説明と合意を実現しなければな
りません。


【戦争法案のレッテル貼りは問題だが、経済界の武器輸出の提言は
もっと問題がある】

 ところで、これらの議論をするときには、以下の二つのことを考
えねばなりません。

 一つは、これら一連の法案を「戦争法案」と決めつけ、「徴兵制
が復活する」というのでは、冷静な議論にならないと思います。も
ちろん、我が国が核武装したり、無条件に自衛隊を海外派遣し武器
使用を行うことは絶対に許さず、冷静な国民の議論と、国会承認を
要件にすることが必要です。

 二つは、今回の議論の最中に、経済界が、日本製の戦闘機を米国
等に部品輸出し、完成した戦闘機を第三国に供与する仕組みを想定
し、提言を行ったことです。これでは産軍一体となった日本をつく
りあげようというものだと受けとめられてしまいます。日本をどう
いう国家にするのか、政府も産業界も国民も、もっともっと謙虚で
なければならないと思います。「平和国家」をつくるのだという確
信を持たねばならないのです。


【大切な友人からの指摘にこたえます】

 ところで、長々と書きましたが、これは自分が国会議員として、
この一連の国家的課題をどう考え、どう取り組んだかを記し、応援
をいただいている皆さんに知っておいていただくためでした。

 というのは、この間、政治的組織からのものを除いて、10数人の
大切な友人から手紙やメールをいただいたことにあります。
 「山田さんの農業・農協問題への真摯な取り組みは評価するが、
国家のあり方を決める大事に賛成票を投じるなら、これまでのお付
き合いを一切やめます、今後の応援もしません」という厳しいもの
もありました。

 すみません、私は、自民党の議員として賛成票を投じました。迎
合的だと言われるかもしれませんが、先輩や仲間の議員の努力を見
たとき、とても反対できません。野党の主張は納得できるものも多
くありましたが、対立だけの議論は時代の要請・変化に応えていな
いと思いました。ただ、先に書いたように、これからが大事だと思
っています。容易な運営にさせません、しっかりご理解いただける
ように努力します。

 また、「政府の最近の一連の、特定秘密保護法、TPP、原発再稼
働、農協法、平和安全法制は、心配だし、残念です」というもので
した。TPPと農協法は、私の政治家としての存在にかかわる問題で
す。ご指摘の意味はよく分かりますし、抗弁のしようがありません。
しかし、私は、世界全体が、これら一連のことを考えていかざるを
得ない環境にあると思うのです。避けて通れません。安易に受け入
れ、迎合するつもりは全くありません。考えて、考えて、そして仲
間をつくり、党の考えや対応を作り上げていくことを考えます。

 「まっとうな日本をつくる」、このことを行い、世界に誇れる日
本をつくりあげていかねばならないのです。どうぞ、ご理解ご支援
をお願いします。

 頑張ります。


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