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山田としお メールマガジン331号
TPPは実質合意か、先送りか

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    ***山田としお メールマガジン No.331***


                     2014年4月28日発行

                山田としお公式ホームページ
            (http://www.yamada-toshio.jp/)

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         TPPは実質合意か、先送りか

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【TPP合意の人質になった共同声明】

 24日午前中の日米首脳会談後の記者会見を、議員会館の事務所の
テレビで見ました。冒頭、安倍総理が、「アジア太平洋地域に大き
な経済圏を作るTPPは国家100年の計であり、交渉参加から1年が経
過し、今や日本は米国とともにTPP交渉を大きくリードしている」
と発言があり、次に、「引き続いて交渉の進展を目指すこととし
た」との言葉が続くとばかり思っていたら、そうではありませんで
した。なんと、「今回の首脳会談を一つの節目に、日米間の懸案を
解決すべく、交渉を継続する。両首脳から甘利大臣とフローマン代
表に対し、残された作業を決着させ、TPP交渉全体を早期に解決さ
せるよう指示を出した。今日この後も両閣僚で交渉が続けられる。
共同声明の発表は、その結果を見てからになる」との言葉が続きま
した。大変なことになったと体が震えました。

 日米首脳会談の重要性は言うまでもありません。まして国賓とし
て招き、わが国にとっては、対中国とは尖閣諸島問題等を、対韓国
とはいわゆる従軍慰安婦問題等の困難な課題を抱えているのみなら
ず、安倍総理が政治生命をかけるほど気合が入っている集団的自衛
権の行使にかかる解釈の見直しをオバマ大統領と確認するには、何
としても共同声明が必要なはずだからです。「共同声明を人質にし
てTPP交渉の合意を迫るのか」「TPPは大変なことになるぞ」という
思いが湧きあがりました。それから間もなく、前夜から当日の未明
3時まで協議を行っていた甘利大臣とフローマン代表との再々協議
が始まりました。

 どういう交渉になっているのか一切外に伝わってきません。しか
し、米国の議会や作物団体の意向を丸々反映することしか頭にない
フローマン代表の姿勢がこれまでと全く変わらず、ましてや共同声
明を人質に取った交渉ということになると、日本側の妥協ばかりが
迫られるのではないのかという危惧が先に立ちました。


【共同声明から消えた「センシティビティ」の文言】

 そして、翌25日、オバマ大統領が離日する直前の10時過ぎに共同
声明が出されました。

 その共同声明を見て驚きました。すなわち、「経済成長を更に増
進し、域内の貿易及び投資を拡大し、並びにルールに基づいた貿易
システムを強化するため、日米両国は、高い水準で、野心的で、包
括的なTPP協定を達成するために必要な大胆な措置をとることにコ
ミットしている」と、とうとうとTPPがいかに素晴らしい政策であ
るかを述べ、そして続けて、「本日、両国は、TPPに関する二国間
の重要な課題について前進する道筋を特定した。これは、TPP交渉
におけるキー・マイルストン(里程標・一里塚)を画し、より幅広
い交渉への新たなモメンタム(勢い・はずみ)をもたらすことにな
る」としていたことです。

 そして、そこには、安倍総理が昨年2月に訪米し、オバマ大統領
と共同声明に盛り込んだ「両国には貿易上のセンシティビティがあ
る」との文言がどこにもありませんでした。安倍総理は、この文言
を盛り込んだ故をもって、「聖域なき関税撤廃が前提ではないこと
が明確になりました」「だから私に交渉参加の判断をさせてくださ
い」としたのですから、何としても「センシティビティ」の文言は
必要だったはずです。これでは、米国の一方的な要求に対するわが
国の唯一の攻め手を失うことになるのではないのか、という思いで
した。

 これでは、「合意」の文言はどこにもないのですが、「道筋を特
定」「キー・マイルストン」「新たなモメンタム」という言葉から
は、品目ごとの数字や仕組みについて一定の合意が進んでいるので
はないのか、という危惧を抱かざるをえません。まさに、まんまと、
日本の外交の重要課題を人質にして、TPPで妥協を求められてしま
ったということです。

 もちろん、具体的な数値や仕組みで詰めるべきものはまだまだあ
るのだと思います。今後は、通商代表部の広報誌ともいうべきイン
サイドUSトレード紙等から、どんどん米国発信の情報が出てくるで
しょう。オバマ大統領とフローマン代表にとっては、日本の合意に
向けての一歩は大きな成果ですし、それをもって議会や業界等の好
感触を得て、選挙戦に臨みたいからです。

 わが国は容易でありません。共同声明が出た25日の夕刊と翌26日
の朝刊各紙は、受け取り方が相当異なりました。読売新聞は、「基
本合意」としました。これは6日前の20日の朝刊で「牛肉の関税は9
%台に引き下げ」と報じて、甘利大臣から今後の取材拒否を宣告さ
れたことに反発し意地を見せたのかもしれません。その正誤はとも
かく、基本合意か、さらなる協議に向けた一里塚なのかわかりませ
んが、日本側が相当押し込まれたことは間違いありません。当然、
品目ごとの関税率やセーフガードの仕組み等で詰め切れていない細
部はいっぱいあるわけですし、米国以外の関心国との調整もありま
す。特に、もしも牛肉の扱いについて米国と豪州で異なるというこ
とになると、豪州は黙っていないでしょう。それをどう扱うのかと
いうこともあります。ましてや農産物以外の多くの交渉事項も、全
く明らかになっていません。自動車についても、どんな扱いになっ
ているのか全く不明です。日本車とは異なる米国の安全基準を押し
付けて、米国仕様の相当数の車の輸入枠を求めてきている米国の姿
勢は一体何なんだと言いたい。これらのことも全く不明です。とも
かく政府はきちんと交渉内容を明らかにすべきです。


【TPA議決なしの米国議会は再交渉を要求】

 もちろん、今回の共同声明から、「そこまで穿って考えるのか」
ということがあります。「まだまだ多くの紆余曲折があるぞ」「甘
利大臣も頑張っているし、日本政府もしたたかに動いているぞ」と
いう見方もあると思います。とりわけ、米国の議会が中間選挙を控
え、TPA法案を通さず、また各作物団体の動きも含めて再交渉を求
めてくる可能性も高いと思います。そういうことになるのなら、
「これまでの合意はすべて白紙に戻す」「交渉から離脱する」とい
う決意を持った取り組みが求められるというものです。そうなる可
能性も大きいと思います。

 というのは、先に触れたインサイドUSトレード紙は、「特別な合
意はなかった」「オバマ大統領は訪日で成果を上げられなかった」
と報じ、また、共和党を中心とする63人の下院議員が連名で、「日
本が農産品の関税と非関税障壁の撤廃に応じない限り、日本が加わ
るTPP交渉を妥結しないという保証を、フローマン代表等に対して
要求している」とも報じているのです。したがって、こうした様々
な事態を予測しながら、まだまだ頑張ることができるということを
認識して、改めて、要求をしっかりと定めて、作物ごとの特性やこ
れまでの数々の経緯を承知している交渉者も含めた体制を再構築し
て臨まなければなりません。


【改めて必要な強い体制づくり】

 しかし、妥協で合意が進められるのであれば、早急に影響緩和対
策の検討を進めなければなりません。もっと言うなら、今、検討が
進められている食料・農業・農村基本計画の審議のあり方にも当然
影響を与えることになります。また、すでに予算措置も決めて、法
律の審議を行い、衆議院で可決している日本型直接支払制度法と担
い手経営所得安定法の改正についても、さらなる検討が必要になる
かもしれないのです。当然、肉用牛、酪農、養豚等の法律や経営安
定の仕組みや予算についても検討が必要になります。

 そのうえで、TPP条約の国会批准を行うことになります。もちろ
ん、各国との合意が必要ですし、相当数の関連法の改正も必要にな
りますので、どの時期になるのか予測がつきませんが、党も、そし
てそれぞれの議員も大きな決断を迫られることになります。

 TPP交渉における国益を守り抜く会の議員との協議や決意を固め、
日本の将来について、誤りのない取り組みを行わなければならない
のです。

 頑張ります。


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