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山田としお メールマガジン227号
米の先物取引がもたらすもの

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        ***山田としお メールマガジン No.227***  
 
   
                    2011年7月1日発行

                  山田としお公式ホームページ
          (http://www.yamada-toshio.jp/)

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                  米の先物取引がもたらすもの
 
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【鹿野大臣、試験上場を認可】

 鹿野農水大臣は、7月1日に、米の先物取引の試験上場を認可しま
した。

 一体、鹿野大臣はじめ筒井・篠原両副大臣はどうしたのでしょう。
全く、政治判断の感度を失ってしまったようです。鹿野大臣は、自
民党におられて、山形の米どころの出身で、元ベトコン(自民党米
価対策協議会)の会長でしたし、米の持つ意味は良くご存じだった
はずです。派閥解消・2大政党政治・小選挙区制度への移行という
政界再編のいきさつがあり、自民党を離れました。筒井副大臣は、
れっきとした社会党の議員でした。米どころ新潟で農民運動の中で、
中選挙区で議席を得て、小選挙区制では民主党に移り、激しい選挙
で勝ったり負けたりしながらも今や何時大臣になってもおかしくな
い環境においでになります。篠原副大臣は、農水省幹部の席を蹴っ
て政界に出て、自民党から出馬してもいいほどの柔軟性のある判断
をする方でしたが、小選挙区で盤石の基盤を持った自民党議員がい
たために民主党から出て当選しています。農業者や農協の関係者に
も支持者が多いです。

 この3人は、菅総理の突然のTPP参加の発言、経産省・外務省のTPP
へののめり込みの中でも、筋を通して抵抗の姿勢を示してきてい
ました。農水省にとり、民主党政権の中ではこれほどの三役体制は
ないでしょう。ところが、先物上場への判断は一体何だったのでし
ょうか。既定の方針との姿勢で、この問題を扱ってきていました。


【もっと早くからの取り組みが必要だった】

 私は、この問題が生じて以降、農林水産委員会で質疑し、「主食
たる米の管理を投機の対象にしていいのか、市場原理の世界に委ね
ていいのか、国が備蓄をはじめ需給への関与が全く出来なくなる世
界をつくることになったのでは、将来に禍根を残す」と主張したの
に対して、農水大臣も副大臣も「公示期間をおいて判断はまだ先だ
から」と答弁するだけでした。

 そして、大震災の中で緊急対応に迫られ、政局も生じ、その混乱
の中で、自民党からの猛反発、与党民主党内にある疑問や問題指摘
にも何ら答えることなく、1ヶ月の判断期間の猶予があるにもかか
わらず急いで認可してしまいました。私は、総理への質問主意書も
出して、決算委員会で、申請者である東京穀物取引所の社長(農水
省の元事務次官)も参考人として呼んで、大々的に質疑を行う準備
をしていましたが、政局で機会を失ってしまいました。残念でした。


【背景は何なのか】

 全く納得がいきません。一体この問題には、どんなことが背景と
してあるのでしょうか。そして、日本の米はどこに向かうのでしょ
うか。

 一つは、主食である米の農政上の位置をよく承知している三役に
とっても抗しきれないほど、流通自由化への政策の流れが出来てし
まっていたということかもしれません。

 これは、小泉・竹中路線の自民党政権の時から、食糧法の改正等
で、国の役割を大きく減らし、自由化の流れを突き進んできていま
した。今回と同様の5年前の先物上場の申請を当時の中川大臣は、
生産調整を行っているという需給上の理由で不認可としましたが、
その際も、相当の議論がありました。

 その後、現物市場である米の価格形成センターの義務上場を撤廃
し、その形骸化を図り、民主党政権になってから、とうとう廃止し
てしまいました。そして公式な価格形成の場がない中で、戸別所得
補償の基礎となる販売基準価格は、全農等による相対取引価格に依
存せざるを得ない状況をつくっておいて、その価格形成が不透明だ
と難癖をつけて攻撃してきていました。しっかり伏線を描いてきて
いたことになります。米の完全な流通自由化を実現するために、今
回、農水省の官僚は、そのチャンスをものにしたということでしょ
う。

 二つは、すさましいまでの農業攻撃の中で、きちんと農業再建の
絵が描ききれず、ズルズルと後退せざるを得なくなったということ
もあると思います。

 国の内外にTPPへの参加を求める動きがあり、それはとうてい飲
めません。どこかで1つ2つ妥協をしておかないと、さらに攻撃され
るという恐れがけじめのない判断につながったのだと思います。主
食たる米の流通が相当自由化してきている中で、国としては、主食
たる米はこう管理する、こういう米生産を作り上げる、現物市場で
価格形成をする、そのために新しい市場をつくる、担い手が食べて
ゆける経営をつくる、そのために農地を集積する、複合経営の作物
対策をこうする、そして経営所得安定対策をこうする、そのもとで、
最低限の国境措置をこういう水準にし、米の多様な需要への仕向け
や輸出政策も含めた対策を講ずる、というものがなかったというこ
とです。

 三つは、このままだと、日本の米はTPP加入に転げ落ちてしまい
かねないという心配です。日本の米も自由市場、投機市場で価格形
成されることになると、2億トンの中国の米や、4000万トンのベト
ナムの米や、3000万トンのタイの米市場に巻き込まれ、わずか800
万トンの日本の米は世界の市場に埋没してしまうことになります。

 こうなってしまったのでは、日本の農地も、担い手も、農協も、
政策対象になりません。農水省も消えて経産省と一緒になるのでし
ょう。現に、農水省は夏の機構改革で産業局なるものをつくるらし
いです。

 自民党が与党だった時代からも、市場開放に抵抗する農業の扱い
は焦点でした。しかし、自民党は議論に議論を重ね、一歩でも前に
進むことを念頭に歩みを続けてきました。必要な政策予算の確保に
も努力してきました。
ところが民主党は、すべての販売農家に戸別所得を補填するとして、
米価が下がっても、その差額を支払うという公約で、農業者の支持
を得て、選挙で勝ちました。その民主党が、今回、投機資金が介入
する先物市場への上場で米の市場原理主義化を進め、さらに米価を
低落させ零細農家の離農や農地の荒廃に拍車をかけようとしていま
す。まさに、米価低落を容認した戸別所得補償は、日米FTAやTPPへ
の道だと言わざるを得ないのです。

 そして他方では、農水省予算は削られ、その3分の1を占める戸別
所得補償制度の維持に必要な財源の確保はますます厳しくなります。
農地を守る土地改良予算も削られ、担い手への農地の集約の予算も
大幅に削られ、「後は野となれ山となれ」、これが民主党の今の政
策です。

 否、自分も含めて自虐的に言えば、急激な市場原理化と国際化が
進む中で、生き残りをかけて儲けを優先する産業界と、それに迎合
する行政官僚システムの中で、選挙ばかりが忙しくて考える余裕の
ない政治の結果なのかもしれないとも思います。

 方向を間違えないように、もっと議論し、もっと着実に進ませる
べきでした。しかし、これ以上手遅れにならないよう、この方向に
何らかの歯止めを打たねばなりません。怒りのあまり乱雑な書きぶ
りになりましたが、落ち着いて頑張ります。




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