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***山田としお メールマガジン No.161***
2009年9月16日発行
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牽強付会(けんきょうふかい)
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石破大臣、ご苦労様でした。
大変な課題を抱えながらも、ここまで乗り切っていただきました。
先の総裁選で候補にもなった方であり、さらに野党となった自民党
ですが、場合によれば党三役等の重職を担う方にいろいろ申し上げ
るのは控えたほうがいいのでしょうが、それにしても、「最後にな
って、そこまで言うか」と驚いたのであえて申し上げます。
大敗した自民党が、政権を譲り渡す日の前日に、もはや形だけの
大臣でありながら、ご自身が主導して主張し、全国の稲作生産者と
関係者に大変な心配と混乱を与えた「生産調整の見直し」をもう一
度持ち出して、「自分が主張してきた生産調整の見直しはかくのご
とく正しかった」というのだから、これこそ、「牽強付会」(けん
きょうふかい)に他なりません。この四字熟語は知ってはいました
が、使うのは初めてで、「道理に合わないことを無理にこじつけて、
自説に有利になるように展開すること」(新明解国語辞典)の意味
です。
石破大臣にあえて「牽強付会」と申し上げる理由は、6つありま
す。
1つは、生産調整の見直しは、アンケートでも農業者の59%が望
んでいるとしていますが、これは「生産調整を強化し、確実に行わ
れるように見直す(21%)」と、「農家の自主性や経営の自由度が
高まるように見直すべき(39%)」を一緒にして、「見直し」が過
半を超えているとしたものです。しかし、同じ見直しであっても前
者と後者は方向が全く異なり一緒にできるものではありません。前
者は「現状のまま続ければよい(25%)」に関連した回答であり、
後者は「生産調整をやめるべき(13%)」に関連した回答です。こ
れらを一緒にするなら、前者のグループ46%、後者のグループ52%
とまとめるべきです。要は、アンケートでは、生産調整の『強化・
維持』と『緩和・廃止』は、ほぼ拮抗しているのです。当初の分析
ではこういう形で整理していたはずです。
2つは、生産調整のぺナルティにしても、「正直者がバカを見な
いようにしてほしい」との観点から未達成者に強化すべきというと
いうものと、「自由にやらせてほしい」との観点から廃止すべきと
いうものを一緒にして、30%の要求があるから廃止するとしていま
すが、これも方向が全く違うものを一緒にしています。
3つは、ここへきて、民主党の戸別農業者所得補償制度の「生産
目標数量を達成した全ての販売農家に対して平均生産費と販売価格
との差額を補償する」とした政権公約を取り入れて、米価下落補て
ん対策を講ずるといいます。これには民主党もビックリでしょうが、
喜ぶのか、憤るのか、果たしてどちらでしょうか。
4つは、相変わらず、WTO農業交渉については全く触れていないこ
とです。「透明で開かれた農政」と言うわりには全く透明ではあり
ません。ご自身に都合の悪いことは省いた、ということでしょうか。
5つは、これも相変わらず、作柄による豊凶変動について全く触
れていません。もし今年の米の作柄が豊作で、米価がことごとく下
がっていたとしたら、今こんなことを言っていられたでしょうか。
6つは、これも相変わらずで、党との論議は全くなされないまま
ですし、どうも農水省内でも広く議論したものでなくて、大臣の私
的なチームにやらせて、大臣の名前で提案したものだということで
す。完全な大臣のパフォーマンスです。
今回の選挙戦で、私を含めた自民党の各議員と関係者は、民主党
の公約が、米国との自由貿易協定(FTA)を前提にしていること、将
来の地域農業を支える担い手をつくることにならないこと、生産調
整の選択制は過剰をつくりだし米価の大幅な低落を常態化すること、
それに備えた財源確保のめどが立っていないこと等々を、声を枯ら
して訴えてきました。その結果が大敗だと言ってしまえばそれまで
ですが、その屍が累々としているなかで、民主党の公約を拝借すれ
ば片付くのだということでいいのでしょうか。もっと慎重な、そし
て、真摯な対応があってもいいはずです。
哀しく感ずるのは私だけではないでしょう。
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